All Arounder
第13章 Tear
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カランカラン
「よー、大志」
マスターの呼びかけにも答えず、大志はドカッと椅子に腰を下ろした
「酒」
不機嫌そうな大志
しかしここで甘やかして酒など渡すはずがない
「今日はブドウジュースだ」
グラスに入った紫色が、外からの光に照らされて、バーテーブルの上を彩った
「ガキ扱いすんな」
「ガキだからだよ」
大志は肩肘をつき、溜め息混じりで言った
「井上は…?」
「退斗なら、もうすぐ来るんじゃないか?」
カランカラン
「ほらな」
マスターは微笑しながら出入り口に目をやった
「大志、マスター、おっす」
「…」
ったく…いつもいつもお気楽な奴だ
挨拶を無視する大志の隣に、井上は座った
「大志、姫ちゃんはいねーのか?」
「いねぇよ」
「えー何でだよ大志いぃい~」
井上は大志の体を揺すった
「何だっていいだろうが!!いちいち口出しすんな!!」
井上は驚いて手を離した
大志はしかめっつらのまま、奥の部屋へ入っていった
「…な…何だよ大志の奴…」
場がしらけたので、井上はガックリして
テーブルに顎を乗せた
「微妙なお年頃なんじゃないか?」
特に心配した様子もなく、マスターは大志に出したブドウジュースを飲んだ