All Arounder
第13章 Tear
『あたしは大志と…』
恋人なんかじゃない…
そんな甘ったるいものじゃない
「若ぇんだし、喧嘩くらいするって」
『違う!!』
斉藤は目を大きく開いた
物静かな姫がいきなり大声を出すとは
これっぽっちも思ってなかったのだ
『あたしは大志の…彼女なんかじゃない…』
「え?」
姫は自分の発言に驚いた
またあたしは
余計なことを言ってしまった
『あ…あたしが勝手に大志に言い寄ってるだけで…
まだ付き合ってるわけじゃ…ないんです…』
「…そうだったんか…」
斉藤は小さく呟いた
なんとかごまかしが利いたようだ
『だから…大志にとったら、あたしなんて迷惑だろうし…』
「でもよ、大志が家に招くほどなんだし、気はあるんじゃねぇか?」
『え…///』
ここにきて、なぜこんなにも照れる必要があるんだろう
あたしは顔の端から端まで、赤くなったのがわかった
「姫ちゃんも、こんなオッサン口説いてねぇで
しっかりあいつにアプローチしねぇと!!」
バシッと背中を叩かれ
痛かったが、とても励まされた
『は…い…』
斉藤は立ち上がり、姫の方を向いた
「じゃあ姫ちゃん、お休み。
今日のことは二人の秘密な」
子供っぽい笑顔に、また励まされた
『…はい///』