All Arounder
第15章 Jealous
声のする方へ目をやると、ひとりの男子が突っ立ってこっちを見ていた
着ている制服から、円香と同じ学校なんだろう
「やっほ、保井(ヤスイ)君」
円香は大志から顔を離すと、保井という男にヒラヒラと手を振った
「円香…何してんだよ…、誰だよその男…」
「誰ってぇ、あたしの彼氏だってば。いるって言ったじゃん?」
円香の言葉に、保井は首を振った
「そんなの…嫌だ、円香は…俺のものだろ…?」
「それは保井君の勝手な妄想でしょ?
ちゃんと現実見なよ」
円香は大志の背中を押し、「じゃあね」と言って足を進めた
立ち尽くす保井の姿がだんだん小さくなっていくと、円香は呟いた
「大志、ありがとう…お仕事終わりだよ」
「さっきの奴、お前の彼氏じゃねぇの?」
「冗談じゃない…あいつ、ずっとあたしに付き纏ってきて気持ち悪かったからさ…」
「だから、彼氏いる風に見せかけて諦めさせようとしたのか?」
すると円香の声は、ますます小さくなった
「まぁねぇ、あたし…恋人いないからさぁ…
付き合った男はみんな体ばっかで…」
「ふーん…」
「まあそれはいいとしてぇ、後で依頼料の1000円渡すから…」
そう言ったとき、いきなり円香は体を持っていかれた
「え…?」
大志が振り返ると、保井が円香の腕を捕らえていたのだ
「あっ、ちょっと…!!」
「円香なしじゃ…俺生きていけないよ…」
円香が嫌がっているようなので、大志は止めに入った
「おい、円香に触んなよ」
一応今も彼氏役で
「嫌だ…嫌だよ円香ぁ…俺と一緒に…なろうよぉ」
少し保井の様子がおかしく思えた
「…お前何考えて…」
その瞬間、保井は円香を引っ張り走り出した