All Arounder
第15章 Jealous
「おい待て!!」
大志も後を追いかけた
保井は人混みをうまくくぐり抜け、どんどん先へ進んでいく
「っ…くそ」
大志も人を押しのけるようにして走っていった
「ちょっと、離してよバカァ!!どこ行く気なのよ!?」
円香は、自分の腕を掴む保井から離れようと必死だった
しかし力は敵わない
「嫌だよ円香…俺たちだけの世界に…行こうよお」
「何言ってんのさ、頭おかしいんじゃないの!?」
「ね…だから円香ぁ、一緒に死のう…」
「!!?」
正気じゃない
助けて
と叫ぶが、周りの人間は見ているだけ
「誰があんたなんかと死ぬか…!!
さっさと離して!!」
「一緒なら怖くないよ…大丈夫、ずっとそばにいるからね…」
話すら通じない
保井はある程度走ったところで、文房具店に入った
棚が敷き詰められて狭い中、商品が落ちるなんてことはお構いなしにずんずん歩いていく
それに気づいた店員は、保井に向かって注意した
「ちょっと君、何してるんだ…!!」
保井は近くにあったカッターを掴み、いきなり振り回した
「うわあっ!!」
店員には当たらなかったが、円香はもう恐怖で頭がいっぱいだった
「も、もうやめてよ!!
こんなことしないで!!」
「ま…円香ぁ」
そのカッターは、今度は円香に向けられた
「もうすぐだからね…もうすぐ一緒に…」
その瞬間、円香を見ていた保井の顔が、真横に吹っ飛ばされた
ガシャーンッ!!
と、辺りに文房具が飛散する
「痛い…誰だよ…?」
保井は顔をさすりながら体を起こす
「誰だって構わねぇだろが」
大志は指をパキパキと鳴らし、保井の前に立った