All Arounder
第15章 Jealous
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「ただいまー」
『またお邪魔します』
大志と姫が家に帰ると、玄関にはもう斉藤の靴が置いてあった
…親父の奴、もう帰って来てたのかよ
廊下から台所へ向かう途中、何やら話し声が聞こえた
どうやらリビングで、親父と母さんが喋っているらしい
別に聞くつもりはなかったが、耳に入ってしまった
「―――…今度の事件、結構面倒でよぉ…誘拐された令嬢探しなんだ」
―――!!!?
大志と姫は顔を見合わせ、二人して壁に耳を当てた
「令嬢って…どっかの社長さんの娘とか?」
「ああ、西浦財閥の一人娘らしい。けど全然手がかりがなくてよ…」
大志と姫は、音を立てないように大志の部屋へ向かった
パタンと扉を閉めると、一気に力が抜ける
「まさか…親父が姫の誘拐事件について捜査してるなんてな…」
『あたし…どうなるのかなぁ…?』
「姫は誘拐された身だ、別にたいした心配はねぇ」
…面倒なのは、オレが
All Arounderだとばれちまうことだ
「とりあえず、向こうはあんまり情報を持ってねぇ。
今はまだ安心しといていいんじゃねぇの?」
『…うん』
姫の写真や名前が知られていないってのが幸いだった…
「姫…オレの家族に自己紹介するとき、名字名乗ったっけ?」
『うん…』
「そっか…」
いや…名字だけでばれるってことはねぇか
とりあえず充分警戒しとかねぇとな…
今日は月明かりさえ出ていない、薄気味悪い夜だった