All Arounder
第4章 A Detective’s Son
カランカラン
酒場の扉を開けると、いつもこの音が鳴る
入ったところは普通のバーだ
落ち着いたレトロな雰囲気で、棚には酒がズラッと並べられ、レコードまで置いてある
「やぁ、大志」
「おはよっす」
声を掛けてくれたのは、酒場の店長
みんなからはマスターと呼ばれている
「今、退斗が接客中」
退斗とは、井上のことだ
「そっか…見てみよっかな」
All Arounderへの依頼交渉は、酒場の奥の部屋で行われる
大志はそっと奥を覗いた
「…」
井上の接客相手は、どうやら中年の女性のようだ
しかも、きらびやか…いや、派手で
香水の匂いがきつい
部屋中に蔓延している
…オレは接客したくないタイプだな