All Arounder
第19章 Tell A Lie
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「…まだ追いかけてきますね」
姫の隣に座っていた一人が後ろを向いた
姫もつられてガラス越しに後ろを見る
『…大志…』
暗さと、バイクのライトの眩しさで、はっきりとは認識出来なかったが
自分たちを追いかけて来ているのは大志だと…、それだけはよくわかった
「どうします、撒きますか?」
「ああ、そうしよう」
使用人たちがそう話すと、車はグンッとスピードを上げた
『た…大志…』
姫は身を乗り出し、大志の姿を確かめようとしたが
使用人の一人が姫の顔を自分へ向けさせる
『触らないで!!』
「お嬢様」
逃れようとする姫の顔を、さらに強く掴んだ
「私を覚えておいでですか?」
『…あんたなんか…知らない』
男はフッと笑った
「酷いことをおっしゃる…私です、黒羽(クロハ)です」
『…くろ…は?』
「お嬢様の面倒は、幼い頃から私がしていましたよ。記憶にございませんか?」
『…』
ある
山ほどいる使用人の顔など、いちいち覚えてはいない
けれどこの男だけは
知っていた
名前を言われるまでは気がつかなかったが
確かに…あたしの世話をしてくれていた