All Arounder
第4章 A Detective’s Son
「…」
大志はぐるりと辺りを見回し、ふと塀の一部に注目した
塀にびっしりとこびりついた苔が、三ヶ所だけ剥がれている
「…いつもここを上って庭に侵入してるってことか?」
凝視している大志に気づき、井上が言った
「たぶんな。もしそうなら、犯人なんてすぐ捕まる」
大志は勝ち誇った笑みを浮かべた
その表情に井上は、良し悪し関係なく身震いする
ああ、これだ
この顔だ、大志…
普段は無愛想なお前が、時たま見せるその表情
自信、冷酷、勝利を掴んだ時のお前のその表情に
俺は惚れ込んだんだ…
18かそこらのガキが見せる表情じゃねー…
ほんとに
ゾクゾクさせんじゃねーかよ
冷たい汗が背中を伝った
大志にバレないよう平静を装う
「それで、どうすんだ、大志?」
「まぁ見てなって」