All Arounder
第23章 Affection
「…」
大志はため息をつきがら、ソファーに腰掛けた
姫もその隣に座り、斉藤の食事が終わるのを待った
「ごちそーさん」
斉藤は手早く食べ終えると、こっちへ歩いてきて
大志たちの前のソファーに座った
「ゆうひ…わりぃけど、ちょっと部屋出といてくんねぇか?」
「え、あ…うん」
食器洗いに取り掛かろうとしていたゆうひは、斉藤にそう言われて部屋を出て行った
リビングには大志、姫、そして斉藤の3人になった
しばらく続いた沈黙を破ったのは、斉藤だった
「大志…」
大志はちらりと斉藤の顔を見た
斉藤の、普段よりも落ち着き払った表情に違和感を覚える
「おめぇが小せぇ頃…将来は何になりたいか聞いたら、何て言ったか覚えてっか?」
「…覚えてねぇよ」
「"お父さんみたいな刑事さん"だ」
斉藤はくくっと笑い、また元の表情に戻った
「…ありえねぇだろ」
「今考えたらな…
けどオレは、その言葉を真に受けてた」
斉藤は足に肘をつき、前屈みになる
「だから昔っからおめぇには、やって良いことと悪いことってのを教えてきたつもりだった…けど…」
今度は苦笑し、どこを見るでもなく、ただ目線を落とした
「もともと…価値観の基準が違うかったんかなー…」
「…」
ここまで弱々しい親父の声を聞いたのは、初めてだった