All Arounder
第28章 My Little Girl
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「"―――こうして、赤ずきんはお母さんとおばあさんと幸せに暮らしました"」
『もう一回読んでぇ』
「お嬢様、今日は珍しく最後まで起きてましたね
けれどもう夜も遅いですし、お眠り下さい」
黒羽がパタンと本を閉じると、姫は不満げな顔をしながらも
ベッドの上に寝転がった
もっと駄々をこねるかと思っていたが、聞き分けのいい子供で良かった
「では、おやすみなさいませ」
『黒羽ぁ…』
「何でしょうか?」
『かなしいこと、あったの?』
「はい?」
姫は体を起こし、黒羽の顔をペタペタと触った
「どうして…そう思われるのですか?」
『黒羽がかなしい顔をしてるから』
見透かされたような…
急にこの少女が、変に怖く思えた
黒羽は姫の手を下ろさせると、そのつぶらな瞳を見つめた
「お嬢様…」
ご存知ですか?
なぜ赤ずきんの母親が、赤ずきんをおばあさんのお見舞いへと向かわせたのか…
母親は知っていたのです
お見舞いへの道中には、狼が出ることを
知っていて母親は、赤ずきんを行かせたのです
理由はひとつ…
母親は
俺のことを、嫌っていたから…