All Arounder
第28章 My Little Girl
本当に
変な家だ
ここへ勤めて一週間になるが、やることはお嬢様のお世話ばかり
…まあその仕事を任されたのだから仕方ないが…
それにしても、お嬢様は毎日毎日部屋に閉じこもってばかりだった
いや、そうするように社長に言われていて
出たくても出られないのだ
庭までは出ることもあるが、それは本当に時折のこと
不憫な、少女だ
「…」
窓ガラスに映る姫を、黒羽は見つめた
ベッドの上で、自分の半分ほどもある絵本を開け
一人で読んでいる
『黒羽っ』
「はい」
『読んで』
ご機嫌に絵本をこっちへ差し出し、
ニコリと笑うお嬢様の顔を見ていると
この子は将来、きっと綺麗な女性になるだろうな
ということがよくわかった
「かしこまりました…"赤ずきん"ですか」
『読んで、読んで///』
「…"昔あるところに…"」
ベッドの前で突っ立って読んでいると、お嬢様は顔を膨らませて
足を叩いてきた
『すわって読んで』
「…"昔あるところに、赤ずきんという女の子がいました…"」
ベッドに腰を下ろして読むと、お嬢様は枕と一緒に俺の隣にやって来た
そのままちょこんと座る姿は、何とも言えず可愛らしかった
「"―――そこへ狩人がやってきて…"」
物語も終盤だというところで、どこからともなく寝息が聞こえてきた
「…おやすみなさいませ」
そっと本を置き、姫を横にさせて布団を掛けると
黒羽は静かに部屋を出ていった