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All Arounder

第29章 I Will Wait Till You Come





黒羽はトンッと壁に背をつけた



「積もりに積もったお嬢様への想いは…もうどうしようもない…」



「好きなら、あんな乱暴なことすんなよ」




井上は黒羽の横顔を見た


何とも言えないつらそうな表情に、こっちの気が参ってしまう




「お嬢様と一緒にいることが…ここまでつらいとは思っていませんでした」




黒羽はフッと微笑した





「お嬢様の俺を見るときと大志を見るときの目…
あれだけ違うと、きついですよ」




思わずギュッと唇を噛む





「わざわざ嫌われるよーな真似しなくてもいいじゃねーか」




「嫌われでもしないと…この気持ちを消してしまえないじゃないですか…」




ただ屋敷で待っているだけだと


少しでも期待してしまう






お嬢様が、いつか俺を選んでくださるんじゃないか

と…



たとえ叶わないとわかっていても…







だからいっそ、嫌われてしまえば…




俺のこの気持ちにも踏ん切りがつけて


忘れられるんじゃないか…と…






「正直な気持ち、伝えたほうがいいんじゃねーか?」





「俺は…使用人です」




ギュッとネックレスを握ると、井上の方を向いた






「お嬢様が戻ってくるまで…俺は屋敷の管理をいたします」





それまでこの30億は保管し…



あなたが戻ってくるのを




待ってますから…













静まり返った夜の世界に



コツコツという靴音だけが響き




音はだんだん消えていった








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