All Arounder
第30章 Man And Wife
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「おい!!」
目の前で机をバンッと叩かれ、目だけをちらっと向けた
そこには半ギレ状態の藤野
「…どうした?」
「どうしたじゃない!!
まだ誘拐された令嬢の行方は掴めないのか!?」
ご立腹のようだ
「…手がかりが少ねぇんだよ」
コーヒーを飲もうと手を伸ばすと、藤野はそれを取り上げた
「手がかりが少なくても解決出来るから、お前にこの事件を任せたんだぞ、斉藤!!」
「…」
手がかりも何も…
誘拐された令嬢は、誘拐したオレの息子とどっか行ったんだよ…
…とは言えねぇもんな
「わりぃな、もうちょい時間くれ」
「こうやってモタモタしている間に、令嬢がどうなってるかわからないってのに…!!」
フンッと鼻を鳴らし、藤野はずかずかと部屋を出ていった
「…はぁ」
…しっかし、どうする?
このまま事件が解決出来ねぇと、オレの仕事が危うい
かと言って、大志や姫ちゃんのことを今さら打ち明けても
それはそれで危うい…
日が沈み、辺りは真っ暗だ
今日はそろそろ上がるとすっか…
「シゲ、お先」
「え!?
待ってくださいよ先輩、まだ書類整理の途中…!!」
「聞こえねぇ、じゃあな」
「ひ…ひどい…!!」