All Arounder
第30章 Man And Wife
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「おはようございます先輩、あ…なんか顔色いいっすね」
シゲがそう言うと、斉藤はニコリと笑った
「まあな」
いつも通り自分の机に座ると、シゲが飲み物を出してくれた
「お、わりぃな」
「いいえ、…何かいいことでもあったんすか?」
よくぞ聞いてくれた
「昨日久しぶりにしたから…調子がいい」
「いいっすねー…僕は最近あんまり相手してもらえないんすよぉ」
「花宝院か?」
「今は嘉山千花ですよ」
シゲはムッとして答えた
「はは、そういやお前ら結婚してたんだよな
いつだっけ?」
「12年も前ですけど…」
「あれ
そうだったか?」
冗談混じりでケラケラと笑っていると、扉をノックする音が聞こえた
「どうぞ」
ガチャッと扉を開けたのは吉川だった
「斉藤、例の事件の…屋敷の人だ」
「!?」
斉藤は顔を歪めた
屋敷の人間…か…
どう言い訳すっかな…
吉川の後ろから一人の男が出てきた
「どうも」
男がお辞儀してきたので、つられて斉藤も頭を下げる
「えーっと…あんたは確か…」
男はクスッと笑った
「黒羽と申します」