All Arounder
第32章 Go Mad
『ちょっとやそっとの挑発で、すぐに喧嘩腰にならないで』
「…」
大志はシュン…と縮こまった
姫は、そんな大志と井上を向かい合わせる
『退斗、言いたいことあるなら、ちゃんと面と向かっていいなさい』
そう言うと、姫は寝室へ向かった
『話し合いだよ、喧嘩したらまた叩くからね、二人とも』
バタンッ
と、扉は勢いよく閉められた
「…はぁ、姫…最近キレすぎ」
「ごもっとも」
何のやる気もなくなり、井上は椅子に腰掛けた
「…ごめん」
「あ?」
「さっきの、嘘」
「…何が」
「やったってこと」
井上が呟くと、大志はため息をつき
自分も椅子に座った
「オレ、お前がたまにわかんねぇ時がある」
「ははは、俺だってわかんねぇのに
大志にわかるわけねーだろ」
顔は笑っていたが、気分はどんどん落ちていくのがよくわかった
「ほんっとに俺…
どうかしちまったんかなー…」
井上は片手で頭を抱え込んだ
「…姫が言ってたろ、言いたいことあるなら言えって」
「じゃー…言おうか?
姫ちゃんに殴られんの、嫌だし」
何かを決心したような目をし、大志の顔を見た
「大志…姫ちゃんのことどう思ってんだ?」