All Arounder
第36章 Past
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本当に何となく、町を歩いていた
ただ、外はうるさかったので
自然と足は、河川敷を歩いていた
とてもいい気分だ
水の流れる音が、ここまで気持ちいいものだとは
今まで考えたこともなかったし、考えようともしなかった
夕暮れ時になると、水面はオレンジ色にライトアップされていった
綺麗で…まるで花火みたいだ
と、そんなことを思いながら、一人歩いていた
「おかぁしゃーん…ぅっく…おとぉしゃーん…」
どこからともなく、声が聞こえた
ふと目線を落とすと、そこには小さな男の子が
涙で顔をめちゃくちゃにしながら、泣いていたのだ
「どうしたの?」
俺の膝元程しかない男の子は
その涙を不器用な手で拭きながら言った
「おかぁしゃぁん…」
迷子か…
「名前、何て言うの?」
「さぃとぅ…たぃし…グスン」
「斉藤…大志?」
ありえない
と思いつつも、男の子をよく見てみると
何となく父親と似ている
ああ…斉藤も小さい頃は、とても可愛かったんだな…
「そっかぁ…大志は男の子でしょ?泣いたらだめだよ」
「…ぅん…グス」