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All Arounder

第36章  Past






「この土手の上まで、競争しよ?」




俺は大志に、手前にある長めの土手を指差してみせた





「いぃよっ」





競争という言葉を聞き、大志は目を輝かせた







「よーいどんで走るよ、いい?」



「うん!!」




大志は走り出す構えを取った



手と足が同じ方が出ていて、思わず笑ってしまいそうになった





「よーい…」






…もう少し時間があったなら、まともな走り方くらい教えてあげられるけど…







「どん!!」





大志は一気に土手を上っていった


小さな体には、大したことのない距離も随分長く感じられる






「はっ…はっ…」




こけそうになれば、地面を掴むようにし
無我夢中で駆けていった








…時間があったなら、本当に一緒に



こんな土手も駆けてみたいけど…











「たぃしのかちっ!!」





大志は土手を上り切ると、嬉しそうに叫んだ




「ねぇ、おじちゃんっ!!」




息を切らして後ろを振り返るが、そこに小泉の姿はなかった






「…おじちゃん…?」







「大志!!」


「大志ぃ!!」




聞き覚えのある声に、大志はもう一度前を向いた








「ぉかぁしゃん、おとぉしゃん!!」












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