All Arounder
第36章 Past
「ごめんね」
俺は大志の頭を撫でながら、体を離した
そしてもう一度手を繋ぎ、ずうっと歩いていった
「大志は…強い子だね、もう泣かないんだから」
「うん」
どことなくぶっきら棒な言い草は、斉藤と似ている
俺の子だったら
どんなところが似ていたのかな…?
小さな手がギュッと指を握った
「…」
少し眠たそうな目をしながら、トコトコとついて来る大志
寝まい寝まいと、唇を噛み締めている
「…おんぶしようか?」
大志は右に左にぶるんぶるんと顔を振った
「じゃあ、もうちょっと頑張ろうね」
オレンジ色の世界が
だんだん黒色に塗り変えられていく
もったいない
そう思ったから、せめてその景色を目に焼き付けておこう
と、まだ光り輝く水面に目を向けたときだった
「大志ー!!大志ー!!」
さよならの知らせが
耳に届いた
大志には聞こえなかったのだろう
目をこすりながら、どんどんと歩いていく
出来るならこのまま
手を繋いで歩いていたい…
でも大志には
帰らなきゃならない家があるんだね
「大志…」
俺が呼びかけると、大志は俺の顔を見上げた