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All Arounder

第37章  Suggestion






中は本堂よりも汚い…というわけではないが
よく人が使っているんだな
とわかるくらい、生活の跡があった



壁や床は雑巾で拭きすぎて、あちこち塗装が落ち

よく歩かれる踏み台は、表面が剥げていた







『大志、あれ何て読むの?』




姫が突然、上の方を指差した



そこには、この寺の名前が書かれた木製の看板



"狂人寺"




「…"くるひとでら"」





「あれは"きょうにんじ"って読むんだよ」





大志の後ろから、小泉が言った





「すごい漢字があててあるんすね…」




「もともとは"興仁寺"って漢字だったんだけどね。
せっかく住職になったんだし、変えてみたんだ」




この人、歴史をコロッと変えたんだ…





「"狂人寺"ってカッコイイでしょ?
俺みたいで」




「えー?…じゃあ…はい」




発想も豊かだけど…


"狂人寺"って…








「住職って凄いよ、何でも思い通りに出来るから」



いや、それはあんただけだ





「でも俺、未だにひとつもお経読めないんだ(笑)」




おい住職!!




「でも安心してね、井上。君が死んだら、約束通り俺が弔ってあげるから」




「いやいや、んな約束した覚えねーし
だいたい、お経読めねー住職に弔ってもらいたかねーよ」





ごもっとも






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