All Arounder
第38章 My Heart Beating
黒いスーツを着こなし、眼鏡の奥の瞳がギラリと光る
長い髪は横にひとまとめにし、椅子に浅く腰掛けた美人の女が、今回の依頼人だった
「まず自己紹介から始めるわね」
女は大志に、懐から取り出した名刺を渡した
「…"Satoコスメティック"の…社長さんですか
佐藤輝美(サトウ テルミ)さん…」
「ええ、ご存知?」
「有名ですから。オレは斉藤大志と言います」
すると佐藤輝美は、大志をじろじろと見てきた
「思ったより…若いのね。もっと熟練の中年オヤジが出て来ると思っていたわ」
All Arounderのイメージってそんなイメージ…?
「くす、期待を裏切って申し訳ございません」
「いいえ、あなたみたいな若い子の方が素敵よ。
後でプライベートの連絡先も教えさせて?」
「ありがとうござ…」
…
姫が扉の隙間からこっちを見ている…
「…います、でも結構です」
「ふふ、わかってるわ、冗談よ」
少し微笑した後、佐藤輝美はいきなり表情を引き締めた
これから依頼内容を話そうというのだろう