All Arounder
第38章 My Heart Beating
「盗み…なんて出来るかしら?」
佐藤輝美は常識人だった
普通はそこから尋ねて不思議ではない
「All Arounderですよ?何でもいたします」
「頼もしいのね…
"メイクアップ鈴木"って化粧品ブランド、ご存知?」
「たしか…貴社のライバル会社では…」
「その通り。最近そこで、新しい薬品が開発されたの…それのサンプルをちょちょっと…ね」
「なるほどね、それをSatoコスメティックの利益に繋げようと?」
佐藤輝美は頷き、足を組んだ
「今まであの会社とは、盗んだり盗まれたりを繰り返してきたわ…
今回は私が盗む番」
「いいでしょう、その依頼、引き受けます。
報酬は…」
「100万でどうかしら?」
その言葉に、大志の口角がゆっくり持ち上がる
「ありがとうございます。依頼品の受け渡しは、いつまでがよろしいでしょうか?」
「そうねぇ…一週間以内なら、いつでもいいわ。
出来るかしら?」
「お任せ下さい」
自信ありげな大志に、佐藤輝美も安堵の表情を浮かべた
「ではその依頼品の詳細についてお聞かせ願えますか?」
「…問題はそこなのよ…」
「はい?」