All Arounder
第7章 Make Me Smile
――――
車が走り出してから、しばらくした時だった
「西浦姫…」
大志の呼びかけに、姫は目をやった
「あんた、何でそんなに無表情なんだ?」
『…』
また黙り込むのかと思っていたが
『無表情は…いけないこと?』
馬鹿なこと聞いちまった…
「別に…そうは言ってねぇけど…」
大志は横目でちらっと姫を見た
この整い過ぎた口元が、
クイッと上がったなら
この大きな目が、引っ張られて三日月形になったなら
…見てみたい
「笑ってみろ」
『…』
「なぁ、笑え」
『…』
何も答えない
顔にも言葉にも
何にも表さない
大志は溜め息をつくと、話を変えた
「さっきお前がはぐらかした話…未練、あんのか?」
『…』
これも、答えないか…
と、もう諦めようとしたときだった
『…ある…』
「!!
…何だ?」
すると姫は、大志の目をまっすぐ見てきた
長いまつげは、瞬きの度に大きく振られる
『あなた…何でも屋だよね』
「All Arounderって言え」
『…』
何か考え込み、姫は前方を向いた
その後は、何も口を開かなかった