All Arounder
第40章 Care For You
それから何時間経ったろう
いつの間にか、手も足も泥だらけになっていた
「あー…全然ねーよ…」
しゃがんで立つ
その動作のひとつひとつに、いちいちめまいを起こす
「…」
葵にそれがバレないように振る舞うが、気を抜くとすぐにでも倒れてしまいそうだ
「退…斗…」
「ん?」
「退斗は何で、そんな松茸探しを引き受けたん?」
「…」
All Arounderが松茸探しとか…格好つかねーよな
いや、でも嘘ついても仕方ねーか
「…何でも屋、やってんだ」
「何でも屋?」
葵は小首を傾げた
「おう、報酬次第でどんな依頼も引き受ける仕事だ。知ってっか?」
「名前だけ…でもほんまにいるとは知らんかったわ」
葵はまた松茸探しを始めた
「…うちも…依頼していい?」
「報酬次第なー」
「…やっぱいいわ」
「はあ?何だよ」
葵は黙ったまま地面と睨めっこする
「…」
この女…何考えてんのか、よくわかんねー…
またしばらく経った時、葉をパラパラと打つ音が聞こえてきた
「あ…雨かよ…」
井上は空を見上げた
次から次から、降ってくる雨
今二人は急傾斜な場所にいる
しかも地面がゆるゆるなので、この状況はまずい
「葵、一回上んぞー」
「んー、わかった」
葵は周りの木の幹を掴みながら、ひょいひょいと軽く上った
しかし井上は、熱に、重いリュック
という重荷のせいでそこまで早く上れない
「もー、何してんねんなー」
葵は少し戻り、井上の手を掴もうと腕を伸ばした
「はは、わりー」
「ほんまに。後で何かおごってや」
井上も手を伸ばした
その時