All Arounder
第40章 Care For You
「退斗…大丈夫か…?」
声を掛けたが、それだけでは目も開けない
「退斗…なぁ、大丈夫なん!?」
今度は肩を何度か叩いた
それでも何も反応しない
顔に触れてみると、異様に冷えていた
「…退斗…?」
ペシペシとその頬を叩く
「冷たいんは…雨やからやんな…?」
急に手が震え出す
「上向いとったら…雨、入ってくんで…?口とか…鼻とか…」
もう一度顔を叩く
「アホやなぁ…苦しぃなるやろ…横向かな…」
そう言いながら、井上の顔を少し横に向けた
何の力も入ろうとしない
ただダランと頭が下がる
「…起きぃな…」
葵はまた地面を掴むように移動し、井上の胸に耳を当てた
「はよぅ…起きぃな…」
ずっと耳を当てつづける
トクンと聞こえてくるのを、ずっと待ちながら
耳を当てつづける
「退斗…冗談ならんて…」
まだ耳を当てつづける
「そろそろ起きな…川に捨てんで…?」
体の痛みなど忘れ
葵は井上の胸をドンッと叩いた