All Arounder
第40章 Care For You
「何で…返事せぇへんねん!!?」
ドンッ
「退斗、退斗!!
なぁ、目ぇ開けぇや!!」
ドンッ
ドンッ
ドンッ
「退斗…頼むから…」
ドンッ
ドンッ
トン…
もう腕が持ち上がらなかった
持ち上がっていたとしたら、無駄に動く肩くらいだった
あとは、無駄に震える唇や
しきりに瞬きするまぶたくらい…
雨とは違う少し温かいものが、止まることなく流れ続ける
「退斗ぉ…」
昨日ただ出会っただけ
「お願いやから…目ぇ開けて…」
喋った回数も
指を折るくらいしかない
「もっかい…髪、綺麗って言って…」
たったそんだけやのに
なんでここまで
こっちがつらい思いせなあかんの…?
「もっかい…抱きしめてよぉ…」
返事は
ない
「っ…」
葵は体中を震わせながら、井上の顔を真上から見据えた
横を向いている井上の顔を、無理矢理こっちへ向けさせる