
All Arounder
第52章 Young Girl
「親父さん?」
「ああ、あんたが見た男、ヒゲが生えてなかったか?」
有利香は目を上に向けた
その曖昧な記憶を辿っているんだろう
「そういえば、ダンディーなおヒゲがあった気がするなぁ。
…あ、刑事だって言ってました~」
有利香は人差し指を立て、へらへらと笑った
「…間違いなく親父だな」
『あーびっくりした』
誤解も解けたようで、姫のほっとした顔を見てやっと大志は安心した
「え~じゃあガックリですぅ…せっかく恩返しが出来ると思ったのに…」
「恩返し?」
「はい!!」
有利香は大志から離れると、ファイティングポーズを取った
「昨日あたしがチンピラに絡まれているところに、斉藤さんが現れたんですよ!!
悪い奴らをアチョーアチョーって倒していって…あたしを助けてくれたんですっ」
有利香は拳をちょこちょこと突き出してくる
サマになっていないところが可愛らしい
『へー、さすが斉藤さんだね』
「アチョーアチョーって…どこの拳法家だよ…」
すると有利香は、大志に向き直った
「斉藤さんの息子さん、代わりに何か、恩返しさせて下さいっ」
「は?」
