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All Arounder

第54章 You Asked For It




「ど、どいてくれ…」



傘を刺しながらフラフラと立つカカシたちに体をぶつからせながら


奥へと進む




「通してくれ…」




どれだけ冷ややかな目を向けられていたのだろう


何も構わなかった



頭によぎりすらしなかった






「ダメですよ、現場は立ち入り禁止です」





目の前に警官が立ち塞がる





「な…にがあったんですか…」





視線は、開け放たれた玄関の奥一点に集中していた






「知り合い、なんです…ここの家の人と…
一体何が…」



「まだ公表できません、さぁ下がって」




「な、中に、女性と子供が住んでいるはずです…
彼らは、無事なんですか…」





「…」






「七香ちゃんと、退斗が…」






警官の顔が、一瞬歪んだのを見逃さなかった





「通してください」



テープをくぐり抜けようとした



「いやまて!立ち入り禁止だと…」




進入を防ぐため腕を掴まれたが

瞬く間にほどいてその体をすり抜ける




「なっ…」




背後に立たれ、焦った警官はすぐさま振り向いた



しかしそんな警官には目もくれず、一目散に家の中に駆け込んだ





「勝手に現場に入るな!!!」



叫び声を聞いた別の警官が一階の部屋から飛び出してきた



「おい、部外者は入ってくるな!」





ああ

なんて重い空気なんだろう




これが仲の良い姉弟が住んでいるような家の空気なんだろうか





俺の行手を阻む目の前の警官も

受け流そうとしたとき、


その奥のダイニングで椅子に座る子供が目についた






「…退斗…」



「…」





退斗は確かに、俺の目を見た



しかし何も声を出さず


いや出せなかったのだろう





視線を外した先は、二階を示していた







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