
All Arounder
第56章 Strong Women
『…たいし…』
「ん?」
姫の呼びかけにほほえむ顔
ゆっくりと距離を縮めると、またキスをした
『大志は、すっごく強いし…』
「はは、なんだよ急に」
唇にくっついた髪を耳にそっとかけてやる
姫はその大志の手に自分の手を重ねた
『かっこいいし…』
「おいおい、褒めちぎっても何もでねぇぞ」
『あたしね…』
「うん」
『…』
姫はきゅっと唇を巻き込んだ
「なんだよ?」
『あたしも…』
恥ずかしさとはまた違った
それでも今の表情を見られることを嫌がって
大志に思いきり抱き着いた
『あたしも、強くなりたいよ…』
「…」
大志は眼を大きく開いた
肩に埋もれる姫の頭を、ゆっくりと撫でる
「…どうして?」
『…』
大志を守りたいから
そんなことを漠然と
葵と話はした
けれどそのときは、本当に漠然としていた
なんでこんな気持ちになるのか
大志が好きだから、
役に立ちたいから、
喜んでほしいから
『あたし…大志みたいに、強くなりたい…』
その気持ちが沸き立つのは
第一に非力な自分に薄々嫌気がさしていたからなのかもしれない
