All Arounder
第8章 Make You Smile
「ってか、オレの椅子がねぇじゃねぇか」
親父は姫が座っている椅子をじっと眺めた
その視線に気付き、姫は黙ってどこうとする
しかし親父は姫の肩を押して、もう一度座らせた
「あんたは座っときな」
『え…でも…』
「いいから」
久しぶりに、親父のニカッと笑った顔を見た気がした
そのまま親父は、スタスタとオレの方へ来たかと思うと
オレは椅子から蹴り落とされた
「ふーぅ」
「"ふーぅ"じゃねぇよ!!
オレの椅子に勝手に座んなジジイ!!」
「親を労れ、クソ大志。
てめぇは突っ立って食ってろ」
箸を手にした斉藤を、大志は引きずり降ろした
「何すんだ、危ねぇだろ!!」
「じゃあそこをどけ。最後に来た奴に座る権利なんてねぇ」
「こっちは仕事帰りで疲れてんだよ!!」
「こっちだって疲れてんだ!!」
親子は睨み合った
こうやって見れば見るほど、二人は顔がそっくりで
さすが遺伝子…
と言いたくなるほどだ
『あたし…どきますから』
姫が腰を上げた
「「姫・あんたは座っとけ!!」」
姫は二人に座らされた
『…???』
その様子を見て、ゆうひはクスクスと笑った
「姫ちゃん、こいつらはほっといて食べよ?」
『…え、あ…はい』
リビングで喧嘩をしている斉藤と大志を
姫はパチクリと見つめ
食事を再開することにした