All Arounder
第9章 A Couple of Night
『みんな…大志の家族は、いい顔で笑うの』
やたらと自分から姫が話し掛けてくるので
大志は黙って聞いていた
『あの人たちと一緒にいたら…いつかあたしも…笑えそう』
そう言うと、姫はキュッと口の端を引っ張った
『いつか…笑えそうなの』
大志はその手を取り、下ろさせた
「…そんな日、すぐに来る」
『…』
姫はコクッと頷いた
「姫はよぉ、昔っから笑えなかったのか?」
大志はあぐらをかき、手の平に顎を乗せた
『…ううん』
「んじゃ、いつから?」
『…お母さんが生きていた時は…楽しかった』
遠い記憶を
掘り起こしていく
―――――――