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一万回目のプロポーズ

第6章 もうやめて






「あ…」



『千尋…』





「二人でコソコソ…何してるのよ…?」




千尋はその目に涙を浮かべた




…泣かないでよ…





「俊司…あたし言ったよね…」



…泣かないでよ




俊司が




心配しちゃうから





「だ…だって…」




千尋は泣いた




「んな、泣かなくても…なぁ、千尋…?」




ほら



俊司は



泣いた子に優しくなる






「俊司…やっぱりあたしのこと…嫌いなんだね…」




「…んなこと、言ってないじゃん…」




「見てたらわかるよ…あたしなんて、遊びで…付き合ってるって…」




違う




俊司はそんなこと、しない






「明奈…」




千尋はその真っ赤にさせた目で、あたしを睨んだ





「俊司に…近づかないで…」





『…』





「もう…どっか行って…!!」





『…』




あたしは


逃げた






腕を掴もうとしたのかわからないけど


一瞬、俊司の手が当たった気がした






それでもあたしは





振り向きもしないで






逃げた








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