掲示板

みんなで掌編小説を投稿しよう!

誰でも参加自由。小説ジャンルも自由。

1レス(500文字以内)で完結する掌編小説を投稿してください。掲示板ジャンルを【宣伝】にしたのは、レスに短い小説を投稿することで、

「この人、こんな感じの小説書くんだな。もっと他の作品も見てみたいな」

という感じで、ここに小説を載せることが間接的にその人にとっての宣伝になってくれればいいな、という思いで選びました(なので、宣伝だけ書くというのはご遠慮ください。あくまでも小説を投稿してください)

掌編小説というのは、200文字~800文字で完結する超短い小説をさします。掌編小説の文字数規定でいえば800文字までなのですが、ここの掲示板のコメント文字数制限が500文字までなので、かなり短くなりますが、500文字以内の小説を書いてください。

楽しい作品がたくさん投稿されることを願って…

スタート!!


29 【リセットボタン】

人生、やり直したいと思ったことはありませんか?このボタンで失敗前まで時間を巻き戻せます。リセットボタン。

怪しい謳い文句が書かれたそれは。四角い銀色の板に赤い丸いボタンがついていた。

「もっとしっかり○○しとけばよかった」
「もっと……もっと……」

時間を巻き戻せたら、次はちゃんと頑張るのに。
僕は、そのボタンを押した。

ーーー
ーーー

「ほぎゃあ、ほぎゃあ」
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」

ーーー
ーーー

彼は全ての記憶も何もかも捨てて赤ちゃんに戻った。

やがて成長し、しかし以前と同じ失敗を繰り返し、またあのボタンに出会い、そしてまたボタンを押す。

本当は時間など巻き戻さなくても、いつからでも、思い立った時からやり直すことは出来るのに、ボタンを押す彼は、永遠に同じ時の中を回り続ける…。

何度も、何度も、そこから抜け出せずに戻り続ける…。
30 【ことば】

「愛してる」
いきなり聞こえた声に、私は顔を上げた。
上目遣いの眼差し。えくぼを刻んだ左頬。
驚く私を見上げて、その笑みは深くなる。
揶揄われたんだと悟ったら、つい言葉が強くなった。
「気味の悪いこと言うなよ」
唇を尖らせて言うと、彼が目を瞬いた。
健康的に日に焼けた肌が白くなる。声をなくした彼に、私はかける言葉を間違えたと後悔する。
颯爽と風が吹いて、枯れ葉が渦のように舞った。
しばらくそのまま、二人とも何も言わなかった。

凄まじい轟音と共に電車が到着し、その沈黙は破られる。
制服の裾を軽くはたいて、彼は手をあげた。
「それじゃ、また」
沢山の人がホームに降り立ち、代わりにほんの数人が乗り込む。チョコレート色の髪の彼も……。
突き動かされるように、私の足は動いていた。
手品のように閉まる扉の前で、彼が驚きを隠せないまま私を見上げる。
「特別快速だよ、これ」
「なんだっていいよ」
にぃっと笑って、私は応える。温い風が肌に当たり、もうヒーターが入っているんだなと頭の片隅で思う。
「ね、さっきの言葉、もう一回言ってよ」
覗き込むように身をかがめ、私は彼の口が開くのを待った。
31 【アンサー】

はっとするほど深い色の瞳に魅入られて、僕は瞬きを繰り返す。
「人がいるから、嫌だ」
不思議なことに、僕のそっけない返事を聞いても彼は目を逸さなかった。
「返事を間違えたな、と思ってさ」
微笑みながらそんなことを言うから、僕の頬は熱くなる。
まさか、さっきの告白が冗談ではないことを知られてしまったのだろうか。
水のペットボトルを取り出して口をつける。無理やりに、平静を装う。
目を合わせたら心を読まれそうだからと、あえて窓の外を向いた。
もう一度言うなんてそんなこと、できない。やっぱりさっきもやめておけばよかった。
緩やかな音を立てて電車は進む。ようやく町並みが変わり始める。
ランドセルを背負った女の子を窓の外に見つけた。リュックの方がいいなんて意見もあるけど、僕はランドセルが好きだ。瑠璃色のそれはとても綺麗で、好きな色を選べることがほんの少し羨ましい。
連続して飛んでいく駅のホームに、大丈夫なのかとつい顔を上げたら目が合った。
蝋燭の芯に炎を灯すように、彼が身をかがめて僕に囁く。
「私も、愛しているよ」
32 【夜型勇者】

『……者……勇者よ……』

 どこからか声がする。

『……勇者よ……起きるのです……』

 勇者?
 俺のことか?

『そうです……あなたのことですよ、ヒロシ』

 マジか!?
 なんで俺の名前っ……
 あんた誰なんだ?

『私は天空の神です。勇者ヒロシにお願いがあります。魔王を倒してほしいのです』

 え……マジ?
 あ~っと、それ今じゃなきゃだめ?

『……どういうことですか?』

 あのさ、俺朝が弱いのよ。
 今、朝の7時だろ?
 出発は夕方くらいでいい?

『構いませんが……』

 さんきゅー。
 んじゃ俺、もう一回寝るわ。


 《ふりだしにもどる》


33 【お気に入りを目指して】

 ひとりの勇者がいた。
 勇猛果敢でどんな敵にも怯まず、身体中に傷を負いながらも、必ず最後には勝利をおさめていた。
 勇者は国の中で厚遇され、その生活も豊かなものだった。そんな勇者に目をつけた女がいた。
 勇者の人となりはもちろん、その生活に、女は目をつけていた。勇者に気に入られて結婚することができれば、夢のような毎日が送れる・・・・・・。そんな思いで、女は自らを変えた。綺麗な服を買い、芳しい香水をつけ、華やかな化粧を施した。そのために多くのお金を費やした。
 そしていよいよ勇者に近づこうとした。しかし勇者の姿はなかった。なんでも、戦争に行ってしまったらしい。毒ガスを使う厄介な相手で、いつ戻るかわからないということだった。しかし女は諦めなかった。今いないなら、戻るまで待てばいい。待つ間、女は、ほかのどんな男に言い寄られても、勇者との生活を夢見て、その一切を断り続けていた。また、自分よりも美しい女には嫌がらせをして、出しゃばらせないようにしていた。

 その頃、勇者は大きな痛手を受けていた。敵の毒ガスによって、視力を永遠に失ってしまっていたのだった。
34 【妄想が止まらない】

腰まで伸びる、長い黒髪の女。
顔は髪で隠れていて全く見えない。
常にうつむき、ゾンビのように歩く。

その女は誰なのかって?

俺もわからない。
気づけばその女のことを考えてしまう。
食事をするときも、風呂に入る時も。
そして妄想するのだ。

深夜、女が歩いている。
街灯はチカチカと点滅し、女の姿を不気味に照らす。

女はとあるアパートに辿り着く。
ギシギシと音を立てながら、一段一段ゆっくりと上る。そして二階の廊下を歩き、ある部屋の前で立ち止まると……

「ああっ、一体何を妄想してるんだ、俺はっ…」

俺はワシャワシャと髪を掻き回した。
そんな不気味な女が自分の部屋に来られても困るのに……妄想が止まらない。

「もう、寝よう……」

俺は布団に潜り込み、目を閉じた。







『……やっと会えたね』

耳元で女の囁きが響いた。


35 【エンドレス2】

リビングで探し物をしていると、おじいちゃんがおぼつかない足取りで入ってきて、「優香さんや、お返しじゃ」と、若干震えている手で私に差し出してきた。
何のお返しかと尋ねると、

「先月『ちよこ』をワシにくれたじゃろ?」
「ちよこ……? あぁ。女性の名前じゃなくて、バレンタインチョコのことですね」
「そうじゃ。『バラバラ死体ちよこ』じゃ」
「それじゃあ殺人事件ですよ。でも、わざわざありがとうございます……あら?」

受け取ったお返しを引き出しに入れようと開けたら、同じお返しが中に。
そこでふと思い出した。数分前、おじいちゃんからすでにお返しを貰っていたことを。
おじいちゃんたら、私にあげたことを忘れてるし。私も私で貰ったことを忘れてるし。
おじいちゃんによくよく思い出してもらうと……もう一つのお返しは、裏のおばあちゃんへの物だったことがわかった。
おじいちゃんはわずかしかない歯を見せながら自分に笑うと、リビングから出ていった。
はぁ。このままだと私までボケちゃいそう。すぐに思い出せるように、常にメモっておきましょ。

えーと……メモ帳はどこだったかしら?

【最初へ戻る】
36 【幽霊】

僕は死んだらどうなるんだろうっていつも考えていた。

「なあ、あそこの廃墟に行ってみようぜ」

親友の智也に誘われて、僕たちは近所の廃墟に行くことになった。

「ここで幽霊を見た奴がいるんだって」

智也がそんなことを言うもんだから、僕は内心ドキドキした。

「そういえばお前さ、美樹にコクられたんだって?」
「あ、うん」
「マジかよ…俺、美樹のこと好きだったのに」
「ごめん」
「は? なんで謝るんだよ、マジむかつくわ、お前」

そう言うと智也は僕の背中を思いっきり押した。
僕は二、三歩歩くと、ちょうど空いていた床の穴に落ちてしまった。そしてそのまま気を失った。

どれくらいたったのか、目を覚ますと辺りは真っ暗になっていた。どうやら智也は僕を置いて逃げたらしい。

ふと誰かの気配を感じた。暗闇の中にぼうっと白いものが浮かび、それは僕に話しかけてきた。

『いかがでしたか、佐藤貴志の人生は』

それを聞いて僕は全てを思い出した。
そうだ、僕はすでに死んでいた。そして佐藤貴志の体に乗り移って人生を生きていた。
そして奴らは、そんな僕たちを幽霊の姿になって監視しているのだ。

37 内緒話
ミルフェは毎週日曜日通っている、村の合唱の練習に来て居る。若い女の子限定の合唱団は村の伝統である。そんな若い女子の話題といえば、これも恒例の気になる男子の話しだ。「ねえねえミルフェ、アイトとはどうなの?」ミルフェの従姉のミレーネだ。「どうって、いつも通り」「ふぅ~ん。ミルフェはアイトのこと好きなんでしょ?」ミルフェは顔を真っ赤にして「う、うん」と頷いた。「アイトも少し鈍感なところあるから、あれだけ分かり安いサイン出してるのにね」「わたしのこと幼なじみの一人としか見てないのかもしれない」ミレーネはふふっと笑うと「アイト優しいとこあるし、お姉さんが取っちゃおうかな」ミルフェはビクッとすると「そ、それは困る」「冗談よ。確かに優しくて可愛いけど、私は年上が好みかな」ミルフェはミレーネが本気に成ったらとてもかなわないと思う。「良いこと教えてあげる」ミレーネはそう言うと、少し屈んで上目遣いにミルフェを見た。「こうやって男子を見るとドキッとするらしいわ」「分かった、今度試してみる」ミルフェはアイトがどんな反応するか、今からドキドキしている。ミレーネはミルフェの様子を見て、ふふっと微笑んだ。
38 【お返し】

「今日、飲み行かねぇ?」
同僚の塚本に誘われたのは、週明けの月曜日だった。
「相変わらず飲みたがりねぇ」
苦笑しながらも、別に反対する理由もない。仕事中だから小さくOKサインを出して応える。
塚本とは、月に1、2度飲み歩く仲だ。同期入社で郷里が同じ、誕生日は10日違い、と何かと共通点があることから親しく話すようになって、2年くらい前から当たり前に飲みに誘い合うようにもなった。
所謂、気の置けない間柄ってやつ。

仕事をうまく切り上げて、前後して会社を出た。同時に出ないのは、やっかみの元を作らないため。これでいて塚本は結構人気があるから。
塚本はいつもの居酒屋ではなく、見つけたばかりなんだ言って小さなバーに向かった。
グラスを合わせた後、おもむろに小さな包みを差し出してくる。
「これ、バレンタインのお返し」
「わざわざよかったのに。義理だし」
毎年何となく渡しているチョコレートは、市販品で可愛げのないものだ。他の同僚と一緒くたに渡すのに、塚本だけは必ずお返しをくれる。
それも他の人がいない時に。
塚本はふっと笑った。
「そっちは義理でも俺は義理じゃねぇよ。2年前からな」
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