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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「冗談にしても、悪ふざけが過ぎます」
 梨花は男から身体を離し、目一杯頬を膨らませた。
「君は歓んだり怒ったり、泣いたり拗ねたり―、本当に忙しいというか、見ていて飽きないね。やはり、君のような娘は見たことがない」
 男は笑いながら、梨花を見ている。
「第一、尹家の息子に告げ口するも何も、私がその息子なのだから、君が心配する必要はないんだよ」
「ええっ」
 梨花は愕きのあまり、言葉を失ってしまう。
 これは、かなりまずいのではないか。梨花は茫然自失の体になった。
 考える間もなく、梨花はその場に膝をついた。
「申し訳ございませんっ。若さまとは知らず、ご無礼の数々、どうか、どうかお許し下さいませ」

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