遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
殊勝に言う梨花を見て、男―尹南斗が困惑げに眉根を寄せる。
「急に他人行儀にならないで欲しい。私は、そなたにそんな風になって欲しくないゆえ、なかなかこの家の倅だと言えなかったのだ。先刻も正直に打ち明けたではないか」
「でも、若さまに馴れ馴れしい口を利いては、女中頭さまに叱られます」
「ああ、丘(グ )明(ミヨン)のことか。確かに口煩いな、あの女は」
南斗は得心したように幾度も頷き、ふと思い出したように笑った。
「だが、グミョンは見かけほど根は悪い人間ではないぞ? あれで、私の面倒を見てくれた乳母なのだ」
「まあ、若さまをお育てした乳母さまでしたの?」
若い女中たちからは鬼のように怖れられている謹厳実直な女中頭が、よもや若さま南斗の乳母だったとは。
「急に他人行儀にならないで欲しい。私は、そなたにそんな風になって欲しくないゆえ、なかなかこの家の倅だと言えなかったのだ。先刻も正直に打ち明けたではないか」
「でも、若さまに馴れ馴れしい口を利いては、女中頭さまに叱られます」
「ああ、丘(グ )明(ミヨン)のことか。確かに口煩いな、あの女は」
南斗は得心したように幾度も頷き、ふと思い出したように笑った。
「だが、グミョンは見かけほど根は悪い人間ではないぞ? あれで、私の面倒を見てくれた乳母なのだ」
「まあ、若さまをお育てした乳母さまでしたの?」
若い女中たちからは鬼のように怖れられている謹厳実直な女中頭が、よもや若さま南斗の乳母だったとは。