遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
南斗の言葉に、梨花は思わず〝梨花〟と応えそうになり狼狽した。
「海棠です」
「海棠―、姓は?」
「崔氏です」
「崔海棠、良い名前だ」
海棠、海棠と南斗は梨花の仮の名前を繰り返す。
不思議なことに、いつもは〝海棠〟と呼ばれても、どこか馴染みのこない、しっくりとしない気持ちなのに、南斗に名を呼ばれただけで、その名前が世にも得難いもののように思えてくる。
「兄が付けてくれた名前です。私を初めて見た時、海棠の花が咲く季節で、何となくその花に印象が似ているような気がしたと言っていました」
「海棠です」
「海棠―、姓は?」
「崔氏です」
「崔海棠、良い名前だ」
海棠、海棠と南斗は梨花の仮の名前を繰り返す。
不思議なことに、いつもは〝海棠〟と呼ばれても、どこか馴染みのこない、しっくりとしない気持ちなのに、南斗に名を呼ばれただけで、その名前が世にも得難いもののように思えてくる。
「兄が付けてくれた名前です。私を初めて見た時、海棠の花が咲く季節で、何となくその花に印象が似ているような気がしたと言っていました」