遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第5章 凍れる月~生涯の想い人~
月明かりの中に、ひっそりと荒れ果てた物置小屋が建っている。取り壊されないのが不思議なくらいの荒れ様だ。
梨花はゆっくりと進み、小屋の前に立った。そっと両開きの扉を押すと、古びた戸が軋みながら開く。
「チョンハ? そこにいるの?」
声を殺して呼んでも、なおも返事はない。
「ねえ、いるのなら、返事をしてちょうだい。チョンハ」
そのときだった。
薄い闇で満たされた小屋からぬっと手が突き出て、梨花の手首を掴んだ。
悲鳴を上げる暇もなく、梨花の口を分厚い手のひらが覆った。
「うぅ」
梨花は呻き声を上げ、懸命に抗う。しかし、哀しいかな、彼女を背後から羽交い締めにしているのは、女ではなく男のようであった。
―これは、チョンハなんかじゃない!!
梨花はゆっくりと進み、小屋の前に立った。そっと両開きの扉を押すと、古びた戸が軋みながら開く。
「チョンハ? そこにいるの?」
声を殺して呼んでも、なおも返事はない。
「ねえ、いるのなら、返事をしてちょうだい。チョンハ」
そのときだった。
薄い闇で満たされた小屋からぬっと手が突き出て、梨花の手首を掴んだ。
悲鳴を上げる暇もなく、梨花の口を分厚い手のひらが覆った。
「うぅ」
梨花は呻き声を上げ、懸命に抗う。しかし、哀しいかな、彼女を背後から羽交い締めにしているのは、女ではなく男のようであった。
―これは、チョンハなんかじゃない!!