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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第5章 凍れる月~生涯の想い人~

「何ゆえ、こやつを庇うのだ? そなたを手籠めにしようとした男だぞ?」
「先ほども申し上げましたではありませんか。私やソヌなどのために、そのお手を穢してはならないのです」
 南斗が剣の鞘を払う。ギラリと鈍い光を放つ刀身が現れ、梨花は身を固くした。
 若さまは本気なのだ。本気でソヌを斬るおつもりなのだ。
 そう思うやいなや、梨花はソヌの前に立ちはだかり、両手をひろげた。
「いけません、ソヌを殺してはなりません」
 お願いでございます。
 梨花は、ソヌを庇うように立ったまま、深く頭を下げた。
「―」
 南斗の手から剣が離れた。抜き身の太刀が床に音を立てて転がる。

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