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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第5章 凍れる月~生涯の想い人~

「ソヌを慕っているのなら、先刻、助けなど呼びませんでした」
「その言い分は信じられそうだな。そなたは、惚れてもおらぬ男に無闇に身を任せるような女ではない」
 剣は依然として梨花に向けられている。
「では、何故、身体を張ってまで、ソヌを庇おうとした?」
 梨花は淡々と応えた。
「ですから、何度も申し上げたはずです。若さまの手がソヌの血で汚れるのを見るのは忍びないと」
「ソヌが自分を陵辱しようとした男でも、か?」
 はい、と、梨花は躊躇いもなく頷いた。
「若さまはお信じにならないかもしれませんが」
 梨花はここで少し逡巡を見せ、それでもひと息に言った。

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