テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第5章 凍れる月~生涯の想い人~

 見上げて問えば、南斗は優しい笑みで頷いた。
「そなたとの約束を果たせるまで、これを持っていて欲しい」
「約束?」
 梨花には、その〝約束〟というのが何を差すのか判らない。
 と、南斗は笑いながら説明してくれた。
「何のことか判らないって? それは流石に少しというか、かなり落ち込むな。私が今まで何度そなたに求婚したと思ってるんだ? どうせ私の求愛の科白なぞ、梢を鳴らす風の音と同じで聞き流しているんだろう?」
「そんな―。酷いです」
 梨花が思わず泣きそうな声を出すのに、南斗はクスクスと笑う。
「これは今日、私がそなたに正式に求婚した約束の証だ。私たちの想いが実るまで、このノリゲを持っていてくれないか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ