遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第6章 兄の心
兄の心
一月の半ばを過ぎた頃、梨花は漸く初めての里帰りを許された。尹家に女中として上がって、実に二ヵ月半ぶりの我が家である。
とはいえ、泊まることなどできるはずもなく、晩までにはお屋敷に戻らなければならない。
それでも、初めての宿下がりに心は弾んだ。
梨花の歓びは、それだけではなかった。帰宅してみると、父ソギョンの健康状態は予想外に良かった。もとより話せないのに変わりはないが、自らの意思で手脚が動くようになっていたのは劇的な回復といえた。
「この頃では、床の上に起き上がる練習も始めたんだぜ」
兄のソルグクも我が事のように自慢げに話した。
梨花は実家に戻ってくる道すがら買い求めた土産の品を兄や父に渡した。
一月の半ばを過ぎた頃、梨花は漸く初めての里帰りを許された。尹家に女中として上がって、実に二ヵ月半ぶりの我が家である。
とはいえ、泊まることなどできるはずもなく、晩までにはお屋敷に戻らなければならない。
それでも、初めての宿下がりに心は弾んだ。
梨花の歓びは、それだけではなかった。帰宅してみると、父ソギョンの健康状態は予想外に良かった。もとより話せないのに変わりはないが、自らの意思で手脚が動くようになっていたのは劇的な回復といえた。
「この頃では、床の上に起き上がる練習も始めたんだぜ」
兄のソルグクも我が事のように自慢げに話した。
梨花は実家に戻ってくる道すがら買い求めた土産の品を兄や父に渡した。