遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第6章 兄の心
「判ってる。お兄ちゃんは、南斗さまと私では身分違いだから、結婚なんて無理だって言いたいんでしょう」
それに対して、ソルグクは暗い顔で黙り込んだまま、何も言わない。
狭い部屋の中に気まずい沈黙が漂った。
ややあって、ソルグクが低い声で言った。
「俺が言いたいのは、そんなことじゃない」
ソルグクは何事か言おうとして口をうごめかし、首を振った。唇を舐め、何から話そうかと思案するように眼を閉じたり開けたりを繰り返している。
「結婚するしないは、若さまとお前の問題だ。何も誰にでも祝福されて所帯を持つだけが結婚というわけじゃねえ。若さまがお前に心底惚れているというのなら、或いは、尹家の御曹子という立場もすべて棄てて、駆け落ちという手もあるだろうよ。俺は、そのことについて、とやかく言うつもりはないし、お前が惚れた男に付いてゆくだけの覚悟があれば、敢えて止めやしない」
それに対して、ソルグクは暗い顔で黙り込んだまま、何も言わない。
狭い部屋の中に気まずい沈黙が漂った。
ややあって、ソルグクが低い声で言った。
「俺が言いたいのは、そんなことじゃない」
ソルグクは何事か言おうとして口をうごめかし、首を振った。唇を舐め、何から話そうかと思案するように眼を閉じたり開けたりを繰り返している。
「結婚するしないは、若さまとお前の問題だ。何も誰にでも祝福されて所帯を持つだけが結婚というわけじゃねえ。若さまがお前に心底惚れているというのなら、或いは、尹家の御曹子という立場もすべて棄てて、駆け落ちという手もあるだろうよ。俺は、そのことについて、とやかく言うつもりはないし、お前が惚れた男に付いてゆくだけの覚悟があれば、敢えて止めやしない」