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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第6章 兄の心

「じゃあ、どうして、そんなに難しい顔をして考え込んでいるの?」
 ソルグクはまた唇を舐めた。唇をひっきりなしに舐めるのは、兄が心にある葛藤をどのように処理すべきか悩みに悩んでいる証拠なのだ。これは子どもの頃からの兄の癖だと梨花は知っている。
 しかし、尹家の若さまと結婚することに異存がないというのなら、兄は何がそんなに気になるのだろう?
 梨花の疑問は当然ではあった。
 ソルグクが切羽詰まったような眼を向ける。
「何て言えば良いのか、俺自身にもよく判らないが、俺がこの結婚に反対する理由はただ一つ、あいつが嫌いだからさ」
「よく―判らないわ。お兄ちゃんは若さまについて殆ど何も知らないのに、どうして、嫌いだなんて言えるの?」

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