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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

「あなたの言うことは、恐らく間違いはないのでしょう。妹が行き倒れていたときに着ていたのは、上等の絹で仕立てられた夜着でした。俺や俺の両親も、ひとめで妹が両班の娘なのだろうということくらいは察しがつきました」
「―妹、あなた方一家は、瀕死のお嬢さまを死の淵から助け、これまで家族の一員として大切に育ててきて下さったのですね。亡き旦那さまにお仕えしていた者として、心からお礼申し上げます」
 ジュソンは込み上げるものがあったのか、しゃくり上げ、言葉を詰まらせた。
「あなたが俺に話したかったというのは、海棠の素姓だったのですね」
「お嬢さまは、今、海棠というお名前なのですか。私が存じ上げているのは梨花さまというお名前でした」

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