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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 ジュソンは訥々と語った。
 猛威徳と並び称されるほどの大商人尹北斗は、かねてから威徳のあくどい商法を快く思っていなかった。〝儲けの一部を民に還元するのが真の商売人である〟との信条を持つ彼は、己れの利潤のみを追求する威徳のやり方に常から批判的だった。
 威徳が右議政と計って兵曹判書林成水を謀殺したと知り、ますます威徳を憎むようになっていた。そこに、自らの屋敷に仕える女中頭の弟が林家の若さまだという少年を連れてきたのである。
 対面してみると、少年は利発で、商人には何より必要とされる算術・計算に優れた才能を示した。この時、実子のいない北斗は、少年を養子として迎え入れることを決めたのだ。
 但し、表向きには養子ではなく、外に囲った側妾に生ませた実の息子を引き取ったのだと言い繕った。長い間、寺に置いていたが、この度、正式に嫡子として屋敷に迎え入れることにすると公表した。

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