遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第7章 哀しい現実
「若さまを姉の手に託してから、私は尹さまの屋敷を去りました。林家にお仕えしていた私がいつまでも若さまの側にいては、万が一、右議政や猛威徳が若さまの素姓について何か勘づくかもしれないと身を退いたのです」
ジュソンは昔を思い出すかのように、眼を閉じた。
「今でも自分の選んだ道は間違ってはいなかったと思いますよ。姉に託したお陰で、若さまは大行首の跡取りとしてご立派に成長なさった。―私の役目はとうに終わりました」
そこで、ジュソンがまた咳いた。
「あばら屋なので、寒いのでは? いちおうオンドル(暖房)がきいてはいるのですが、それでも隙間風が入ってくるから、結構冷えます」
ソルグクが気遣うと、ジュソンは笑った。
「お優しい人だ。大丈夫です、構わないで下さい。私も五十を過ぎました。妻も子もいない一生でしたが、大事を成し遂げたと自分では思っています。あなたもお気づきのように、私は病持ちです。恐らく、さほど長くは生きられない。
ジュソンは昔を思い出すかのように、眼を閉じた。
「今でも自分の選んだ道は間違ってはいなかったと思いますよ。姉に託したお陰で、若さまは大行首の跡取りとしてご立派に成長なさった。―私の役目はとうに終わりました」
そこで、ジュソンがまた咳いた。
「あばら屋なので、寒いのでは? いちおうオンドル(暖房)がきいてはいるのですが、それでも隙間風が入ってくるから、結構冷えます」
ソルグクが気遣うと、ジュソンは笑った。
「お優しい人だ。大丈夫です、構わないで下さい。私も五十を過ぎました。妻も子もいない一生でしたが、大事を成し遂げたと自分では思っています。あなたもお気づきのように、私は病持ちです。恐らく、さほど長くは生きられない。