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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第7章 哀しい現実

 偶然、庭を通りかかった女中は、尋常でない若さまの様子を見て泡を食った。すぐさま奥さまに報告が行き、スンヨンが駆けつけた。
「南斗、何をしているの? お止めなさい、南斗!」
 何度目かにスンヨンが絶叫して初めて、南斗は地面を打つのを止めた。
「無茶をするから、手が傷ついているではありませんか。愚かなことを」
 スンヨンは息子の手を撫でて、声を詰まらせた。
 南斗の手は酷く傷つき、血が滲み、涙が地面を濡らしていた。
 南斗は放心したように座り込んでいる。その瞳は虚ろで、まるで真に狂人となり果てたかのようだ。

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