遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第8章 終焉
「このようにご立派なご子息を持たれて、貴殿はお幸せですぞ」
フン、心にもないお世辞なぞ、お前には似合わないぞ。
思わず毒づいてやりたいのを堪え、南斗は淡く微笑った。
傍らの北斗が愉快そうに言う。
「まだまだ海の物とも山の物とも判らない若造です。威徳どのから、この者に商人の何たるかをよく仕込んでやって頂ければ光栄です」
「いやいや、ご謙遜なさるな。ご当人の前では言いにくいことですが、父御よりも更に侮れぬ大器と商人仲間の内でも専らの評判ですぞ」
威徳はまたも癇に障るキンキン声で言い、更に思いがけぬことを口にした。
「儂には娘だけで、息子がおりません。こればかりは、いかようにもなりませんな。妻の他にも何人の妾を囲いましたが、生まれるのは皆、女ばかり。金子を積んで息子を得られるのであれば、とっくの昔にそうしていたでしょう」
フン、心にもないお世辞なぞ、お前には似合わないぞ。
思わず毒づいてやりたいのを堪え、南斗は淡く微笑った。
傍らの北斗が愉快そうに言う。
「まだまだ海の物とも山の物とも判らない若造です。威徳どのから、この者に商人の何たるかをよく仕込んでやって頂ければ光栄です」
「いやいや、ご謙遜なさるな。ご当人の前では言いにくいことですが、父御よりも更に侮れぬ大器と商人仲間の内でも専らの評判ですぞ」
威徳はまたも癇に障るキンキン声で言い、更に思いがけぬことを口にした。
「儂には娘だけで、息子がおりません。こればかりは、いかようにもなりませんな。妻の他にも何人の妾を囲いましたが、生まれるのは皆、女ばかり。金子を積んで息子を得られるのであれば、とっくの昔にそうしていたでしょう」