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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第8章 終焉

ていただけませんかな。正妻の生んだ娘が三人おりますが、幸い、どの娘も儂には似ず、家内の方に似ました。二番めの娘が今年、十八になります。父親の口から言うのも何ですが、従順で縫いものや料理の腕もなかなかです。大人しい割には、しっかり者ゆえ、家政を取り仕切るのにも適任でしょう。ご子息の南斗どのの良き伴侶となると思いますよ」
 猛威徳が父の帰国祝いをすると言い出したその裏には、やはり、企みがあったのだ。
 南斗は傍らの父と素早く視線を交わす。
 自分が見抜いたほどだから、父は威徳の思惑など端からお見通しだろう。
 これまで威徳は父とは徹底的に競争してきた。父を出し抜き、打ち勝つことこそが威徳の目標であったはずだ。
 だが、ここに来て、威徳は方向転換というか作戦変更に出たらしい。経済界の実力者にして重鎮の父に敵対するより、味方になると見せかけて自分の側に取り込む道を選んだのだろう。

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