遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第8章 終焉
梨花は慌てて箪笥の引き出しを開けた。いちばん上の引き出しを開けると、中はもぬけの殻だった。そこは兄の衣服を入れる場所と子どもの頃から決まっていて、母譲りの几帳面さを持つ兄らしく、いつもきちんと畳まれた衣服が入っていた。
念のために二番目と三番目を明けてみるが、父の衣服の入っている四番目は別として、後は哀しいくらい何もなかった。
梨花は家を飛び出した。
隣家の前で、おばさんが赤ン坊を抱いてあやしている。嫁いでいる娘が孫を連れて帰ってきているのかもしれない。
「おばさん、こんにちは」
「おや、お帰り。今日はお休みを貰ったのかい?」
愛想良く訊ねてよこすのに、梨花は首を振った。
念のために二番目と三番目を明けてみるが、父の衣服の入っている四番目は別として、後は哀しいくらい何もなかった。
梨花は家を飛び出した。
隣家の前で、おばさんが赤ン坊を抱いてあやしている。嫁いでいる娘が孫を連れて帰ってきているのかもしれない。
「おばさん、こんにちは」
「おや、お帰り。今日はお休みを貰ったのかい?」
愛想良く訊ねてよこすのに、梨花は首を振った。