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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 梨花が笑うと、ソルグクは真顔で首を振る。
「たかだか助けてやっただけの女のために、知り合いの高名な医者を寄越すとでも? 海棠よ、こんなことを言えば、お前はまた怒るだろうが、あいつは下心があるからこそ、お前の気を惹きたくて医者を寄越したんじゃねえか?」
 俊秀は梨花がどれだけ食い下がっても、最後まで〝依頼者〟の名を明かそうしなかった。
「お兄ちゃん、私のことなんかより、今はお父さんの心配をするときよ」
 帰り際、俊秀は二人に告げたのだ。ここ二、三日が山場となるだろう、そして、幸運にも生命を取り止めたとしても、廃人同様―言葉を発することも手足を動かすことすらできなくなるのは間違いないと。

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